シルバーの地味なステンレス鍋が気になる。ネットで「片手鍋」と検索すると必ず紹介されている。なぜなのでしょうか?
使いやすさや独特の形状、口コミの多さなど、紹介される理由が分かりませんよね。
不思議に思っている方へ!今回は柳宗理(ヤナギソウリ)が手がけるキッチンウェアの一つ、ステンレス片手鍋について簡単に解説します。
誰もが知らないままで紹介されている柳宗理のステンレス鍋、一体何が魅力なのか、この記事を通じてご紹介したいと思います。そうすれば、「なぜ?」という疑問も解消されるでしょう。
また、記事の後半ではデザイナーの柳宗理についても少しご紹介します。
デザインと商品の関係性がいかに重要な要素であるかについても触れました。
興味のない方は、飛ばしていただいて構いません。
この記事では以下の内容について詳しく書かれています。
- 片手鍋の仕様と金額、特徴、使用感について
- デザインの力で商品は売れる
- デザイナー、柳宗理とは
- アノニマスデザインがデザイン
柳宗理(ヤナギソウリ)のステンレス鍋は販売から40年以上経過しました。現在もデパート、ECサイト、キッチン専門店などで取り扱われています。
その理由は使いやすさと美しさを追求した結果から生まれた機能美が見事に融合しているからです。
柳宗理のステンレス鍋やステンレスケトルなど、彼の作品をぜひ一度手に取り、その感触を味わってみてください。取っ手を握った瞬間に「シックリ」とくるでしょう。感動を覚えることでしょう。
ステンレス製片手鍋
以下にステンレス片手鍋を紹介します。形は同じですが使用する熱源によって定価が異なります。
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/片手鍋‗1-1.jpg)
ガスコンロ対応タイプは3種類
- ステンレスミルクパン
- 1、ステンレス片手鍋 18cm
- 2、ステンレス片手鍋 22cm
IH対応、片手鍋は2種類
- 1、ステンレスアルミ3層鍋 18cm
- 2、ステンレスアルミ3層鍋 22cm
(IH対応はガスコンロにも使用できる。IHとは電磁誘導加熱、電磁調理器です。)
現在、個人的に使用している鍋は全てガスコンロ対応で2002年から使用し、今年で21年目である。使っていてこれは便利、これは良くないと思うことも以下にまとめました。
紹介する鍋は「ミルクパン」を例にして紹介します。
ステンレスミルクパンの特徴は3点
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/P1010170-1024x768.jpg)
1、鍋形状とフタ
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/P1010148-1024x768.jpg)
いちばん使用頻度が多いミルクパン約16cm、ブロッコリーを茹でる。二人分の味噌汁を作るなど少量の茹で、煮る料理で活躍。
茹で料理で「おっと」と感じるのが、湯切りである。
鍋の形状と同じく、フタも左右引っ張られたように羽がついています。羽の付いたフタを左右に回すことで鍋と、フタに隙間が生まれます。
フタと鍋の隙間は沸騰している時は蒸気を逃し、茹で上がった時は鍋の中の食材をこぼすことなく湯切りが簡単にできる機能を作り出す。
鍋に小さな印「○」丸が付いています。これは取っ手(柄)と印○のを合わせることで完全にフタが鍋と合っていることを示し、隙間がなくなります。
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/丸い穴.jpg)
2、注ぎ口(湯口)角度のデザイン変更
右利きの方はもちろん、左利きの方にも無理なく湯切りができるように、柳宗理の片手鍋は設計されています。
初代デザインは1963年に製造されたもので、注ぎ口(湯口)は現在のものとは異なり直角になっていました。しかし、このデザインでは湯切り時に蓋のつまみを押さえる手でお湯が見えないため、危険が伴いました。
そのため、現在のデザイン(1999年に変更)では注ぎ口の角度が変更されました。
注ぎ口位置を中心より上にずらした。
蓋を抑えた手より上の部分に注ぎ口がくるようにされています。
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/蓋角度.jpg)
3、取っ手(柄)が手になじむ!
柳宗理の片手鍋を握る瞬間、まったく新しい感覚が広がった。その取っ手は絶妙な太さで、鍋本体の重さとのバランスが絶妙に調和している。微妙な変化が手によくフィットし、デザインの完成度を高めている。
柳宗理はデザインに取り組む際、「手でデザインを考える」という方法をよく話していた。見た目だけでなく、手にフィットする感覚を重視するのだ。
彼は技術者、クライアントとの打ち合わせでもスケッチは描かない、常に模型(モデル)を使って打ち合わせを行う。
ステンレス片手鍋の取っ手は数多くの模型や実物大の試作を経て生まれたデザインなのだ。
取っ手を握るだけで、柳宗理のステンレス片手鍋が素晴らしいデザインであることが伝わってくる。
ステンレス片手鍋表面仕上げ
ステンレス片手鍋の仕上げには2タイプあります。
- つや消し(ヘアライン)
- 鏡面仕上げ
・つや消し(ヘアライン)仕上げは髪の毛ほど細く長い筋目で表面、裏面を仕上げたタイプです。少し手間がかかっています。
・鏡面仕上げは字のごとく、鏡に近い仕上げになっています。
材質はステンレス、18−8
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/18-8-5-1.jpg)
素材の数字18-8はクロム18%とニッケル8%を加えた金属のことで、ステンレス18−8は錆にくい金属といえる。
注意、ステンレスでも錆は発生します。
普段使いのステンレス鍋で錆が発生する原因は、もらい錆や、鍋の中に料理を長時間、放置した場合、またヤカン(ケトル)では中を洗浄しないことで錆が誘発される。
ステンレス素材だからと言って、錆びないわけではない。錆を防ぐためには錆びやすい物との接触を避け、汚れは早めに洗い流し、乾燥させる。
手入れの詳細は 柳宗理デザインシリーズ・製品サポートサイト を参照。
柳宗理のテーブルウェアやキッチンウェアは「佐藤商事株式会社」ライフ営業部門にて取り扱っています。
ステンレスミルクパンのまとめ
- 二人分の汁物に最適
- フタで湯切り、沸騰に対応
- 仕上げはつや消し(ヘアライン)と鏡面に2種類
さすがに20年以上使い込んでいると取手(柄)が熱硬化性樹脂と思われる部分に縦に亀裂が入ってきました。
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/片手鍋‗2-1.jpg)
修理・部品交換
修理・交換部品の対応されているので、破損された場合は部品の取り寄せ、修理依頼ができます。
たとえばミルクパンの取っ手(柄)破損された場合715円で取っ手セット商品を注文できますので長く安心して使われるでしょう。
修理・部品交換について詳しく知りたい方は下記をクリックしてください。
https://www.yanagi-support.jp/ja/repair.html
ミルクパン、デメリット
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/水が出る穴‗6-1.jpg)
- 焦げた場合の焼き焦げ跡は残り、ステンレスたわしでこすっても完全にとれません。
- 洗い終えて通常の置き方(口を上)にすると取手(柄)から洗った後の水が流れてきます。
- 取手(柄)からの洗い終えたあとの水は数分後に流れてくるので注意。
- 洗い終えてすぐにガスコンロの五徳に置くとバーナキャップが取手から流れた水で濡れ、すぐに点火できなくなります。
焦げにくい鍋はある
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/焼け焦げ.jpg)
柳宗理のステンレス鍋は「焦げやすい」と言われています。焼け焦げで鍋底が変色するので、損をされた思いのある方も多いようです。
焦げはどんな素材鍋でも生じます。世の中には「焦げない」鍋はない。高温で水分のない食材を焼くと焦げやすい。焦げることは熱による化学反応で炭化することである。しかし「焦げにくい」鍋はあります。
ミルクパン、容量
この表は実際に鍋に水を入れて沸騰できる容量として表したものです。
鍋のサイズ | IH | a,内部深さ | b,取手長さ | c,握り部位 | d,鍋の上端からの距離 | 容量 |
---|---|---|---|---|---|---|
18cm | あり | 約82mm | 160mm | 140mm | 24mm下がり | 約1300CC |
22cm | あり | 約67mm | 190mm | 160mm | 22mm下がり | 約1400CC |
16cm(ミルクパン) | – | 約72mm | 140mm | 115mm | 22mm下がり | 約700CC |
商品タイプ | 本体(フタなし) | 本体+フタ付き |
---|---|---|
ミラータイプ | ¥5,500 | ¥6,600 |
つや消しタイプ | ¥5,720 | ¥7,150 |
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/片手鍋‗3-2.jpg)
柳宗理のステンレス鍋、このような方には「おすすめ」しません。
- こびり付きが気になる方
- 鍋底の変色が気になる方
- コスパを求めている方
- カラフルな色を求めている形
以上の方には「おすすめ」しません。または片手鍋に求める要素に、汚れが簡単に落ち、洗った後の水切りが早く、容量目盛が付き、軽い鍋、そしてお求めやすい価格鍋をお探しのかたにも向いていません。
焦げにくい鍋
水を使わずに料理できるという錯覚に陥りがちなのが「無水鍋」です。この鍋は食材の水分を利用して料理をするため、焦げ付きを防ぐことができます。もし鍋底の変色や焦げ付きを防ぎたいのであれば、「焦げにくい」鍋を選ぶことをおすすめします。
焦げにくい鍋でおすすめなのは、以下のような表面加工が施された鍋です。
- エンボス加工
- セラミック加工
- フッ素樹脂加工
これらは代表的な表面加工の例です。これらの鍋は、さまざまな色や形状があり、価格帯も幅広いため、好みに合わせて選ぶことができます。
デザインの力で商品は売れる
商品とデザインとの関係について、すこし古い話を紹介します。
1952年、たばこ「pairs(ピース)」のパッケージデザインが人々に「デザイン」を意識させるきっかけとなったお話です。
パッケージデザイン料1,500万円
たばこ「pairs(ピース)」のパッケージデザインをされたデザイナー「レイモンド・ローウィ」に支払ったパッケージデザイン料は当時1,500万円。
新聞などの報道で人々はデザイン料1,500万円に驚くばかりで、肝心のデザインには興味を持たなかったようである。
当時の日本の世帯収入は月平均20,822円であり、年収約25万円程度での生活感覚で1,500万円のデザイン料は別世界のお話のようであった。
デザイン変更後のたばこpairs(ピース)、売上6倍
たばこ「pairs(ピース)」のデザイン変更後の売上は前年比で6倍に増加しました。デザインが商品売上に与える影響の大きさを実感し、デザインをマーケティング戦略に組み込むようになりました。
この事例は、たばこ「pairs(ピース)」のデザインが企業と外部デザイナー、初の共同作業によって生まれたマーケティング事例である。その後、デザインはマーケティング手法のひとつとして認識された。
これを機に企業はデザインを重要視しました。
現在、デザインは商品やブランドのイメージ形成や消費者とのつながりを強化するための重要な要素として位置づけられるようになったのです。
デザイナーと企業の協力関係が一般化し、デザイナーによるデザインはビジネスの成功に貢献する存在となり、デザインの力が商品の売上に与える影響は明確に示された。
デザイナーによる商品デザインは商品の魅力や競争力を高め、消費者の購買意欲を喚起することが可能となりました。しかしデザイナーがデザインする物が全て良いとは限らないのが難しい点である。いいデザイン、売れるデザインは何か?そこには明確な答えはない。自分で見極めるしかない。
デザイナー、柳宗理
柳宗理(やなぎむねみち)は、1915年から2011年までの期間において活躍した日本を代表する世界的なデザイナーでした。
宗理(そうり)とも呼ばれています。
彼はデザインの重要性を啓蒙し、公共建築から先程紹介したキッチンウェアなどかず多くのデザインに関わり、彼がデザインした造形はいつの時代にもスポットを浴び現代のデザイン界においても輝き続けています。
彼は東京美術学校の洋画科で学び、そこで建築家のル・コルビュジェを知り、独学でフランス語を習得する。27歳の時、旧神奈川県立近代美術館設計者、坂倉準三事務所に出入りしながらデザインの道に進みました。
1941年、彼はコルビュジェ事務所の所員であるシャルロット・ペリアン女史と出会い、彼女から素材、機能、用途をデザインにおいて重要な要素であるこを学んだのです。
シャルロット・ペリアン自身は日本に「工芸指導顧問」として来日、柳宗理が通訳をつとめる。シャルロット・ペリアンは柳宗理の父である宗悦と「民藝」の思想に共鳴された。
1950年(昭和25年)、柳宗理は柳インダストリアルデザイン研究所を設立しまし、当時の日本では「デザイン」という概念はまだ浸透しておらず、デザインは価値のないものとされていた。
しかし柳宗理は戦後すぐに物資のない時代でもデザインの重要性を訴え続けたのです。
柳宗理の作品の中で、公共建築に関わる例
年 | 作品 | 概要 |
---|---|---|
1962年 | 東京オリンピック運搬用聖火コンテナー | オリンピック聖火を運ぶためのコンテナー。シンプルで美しいデザインが特徴。 |
1972年 | 札幌オリンピック聖火台 | オリンピック聖火を灯すための聖火台。円錐形の形状が特徴。 |
1972年 | 横浜市都営地下鉄(ブルーライン)のファニチャーデザイン | 日本で初めてデザイン専門家集団が公共事業に携わったプロジェクト。 ・サインと車体デザインはGK 榮久庵憲司(えくあんけんじ)氏、 ・カラーリングは粟津潔(あわづきよし)氏、 ・建築は横浜国立大学の河合正一(かわいしょういち)教授が担当。 |
1980年 | 東名高速道路 東京料金所の防音壁や中央分離帯のデザイン | 日本道路公団の発注によるプロジェクト。防音壁は波型の形状、中央分離帯は緑地帯を整備。 |
その他 | 柳宗理は金沢美術工芸大学で50年あまり、 教授として教育活動を行いデザイナー育成にも携わっていた。 |
川崎和夫、金沢美術工芸大学時代の恩師は柳宗理
柳宗理は、物のデザインばかりではなく、金沢美術工芸大学ではデザイナーを志す若者を教育することを行っていました。柳宗理の教え子であるデザイナー川崎和夫は2015年、柳宗理100年記念公演を行った。
(川崎和男:デザイナー、医学博士、大阪大学名誉教授、名古屋市立大学名誉教授、デザインディレクター)
柳宗理の尊敬する企業、及びデザイナーは
- コルビュジエ(建築家)
- シャルロット・ペリアン(建築家)
- チャールズ・イームズ(デザイナー)
- IBM(テクノロジー関連企業)
- ハーマンミラー社(家具メーカー)
- Braun(ドイツ、電気機器メーカー)
などです。
晩年の柳宗理は、特に「UNIQLO」のファッションを好んで着用していました。好んだ理由はUNIQLOのロゴや価格、品質、そしてデザインに魅了されたからです。
2019年には柳宗理のアトリエ訪問記事がUNIQLOの発刊誌「Lifewear magazine」に掲載されました。
柳宗理はその長いキャリアを通じて、日本人にデザインの重要性を訴え続け、世界的なデザイナーとしての地位を確立しました。
彼の作品は数多くの人々に影響を与え、彼自身も多くのデザイナーや企業から尊敬を受け、彼のデザイン哲学や美意識は、今日のデザイン界において重要な指標となったのです。
柳宗理の功績は、日本のデザイン業界におけるパイオニア的存在であり、彼の遺産は今もなお、長く語り継がれ、独自のアプローチや洗練されたデザインは、世界中の人々にインスピレーションを与え、デザインの力を広める一石を投じました。
柳宗理の偉大な業績は、現代のデザイン界においても輝き続けています。その1つとして、「バタフライスツール」を紹介します。
バタフライスツール
バタフライスツール定価57,200円。あなたは即決して購入しますか?悩み断念する方が多いのではないですか?
購入する方はお金に余裕があると思われがちですが、それは常に正しいわけではありません
約40センチほどの小さなスツール、定価57,200円にどのような価値を見出すかで購入は決まる。
- 家具を一生物として価値を見出すか?
- 使い捨てとしてその場しのぎで利用するか?
答えはない。ここでは家具を一生物として考える。「親から子へ、子から孫へ」と受け継がれる家具もあっていい。本来家具はそう有るべきです。
バタフライスツールは1958年にニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションに選定され現在も日本では天童木工で販売され、50年以上の時間を経て未だに魅了されるデザインです。
デザインは時間との戦い、バタフライスツールは時間に勝ち続けたデザインである。
物には思い出が生まれ、使う人を楽しませてくれる。形や機能は変わらなくとも人の成長を見守るように次の人に受け継がれる家具もある。それはデザインされた物に生まれる。
バタフライスツールの誕生
1956年、戦後日本政府の指示でアメリカの工業生産技術、デザインを学ぶために渡米した柳はデザイナー、チャールズイームズのもとを訪ねた。
そこでは足の怪我をされたアメリカ兵に木製板、合板曲げ加工を利用した足カバーが作られていたのです。この合板曲げ加工技術はのちにイームズチェアにも用いられている。
柳もこの合板曲げ加工で何か作れないかと2年、3年と考え続けた結果、今のバタフライスツールの原型がうまれたのです。
しかし特殊な形で特殊な技法で製作するため、どこのメーカーも無理、作ろうとしませんでした。諦めきれずに探し続けた結果、工場ではなく工芸試験所で一人の技術者にめぐり会ったのです。
乾三郎(いぬいさぶろう)との出会い
しかもその技術者はイームズチェアで用いられた高周波整形技術で作られる整形合板を研究されていた方で、後に天童木工のデザイナーとしてベストセラー作品を作り上げた「乾三郎」であった。
苦労の末に1つの試作品ができ上がった。バタフライスツール1号の試作品を記念しイタリア国際デサイン展(トリエンナーレ)に出品することにしました。その結果ゴールドメダルを獲得する。
イタリア国際デザイン展ゴールドメダル受賞が新聞報道されると2〜3社の工場がバタフライスツールを製作したいと手を上げてきた。その1社が今も生産し続けている山形県天童市にある「天童木工」である。
バタフライスツールの構造
バタフライスツールの構造は簡単である。カタカナの「フ」の字に整形された合板を2枚、ボルト2個、ステー1本で出来上がっています。
製作当初は畳での使用を想定し、畳を傷つけないように脚部を平らに切り取り加工し、畳面に2本の線としてバタフライスツールの足が接していました。
しかし日本での生活様式が変わり畳よりフローリングへと変わり、バタフライスツールの足も脚部の中心をえぐる加工をして線から点に変え、4本足支点、仕様に変更されています。
バタフライスツール製造、販売元
現在バタフライスツールの製造は日本の「天童木工」とスイスの「ヴィトラ」社で製造、販売されている。
何十年もの時間を経た家具、それもデザインされた家具、物にはお金以上の価値を自ら生み出して独自の価値を持つことができる。
アノニマスデザイン(作者不明デザイン)がデザイン
アノニマスとは無名と言う意味で、誰がいつデザインしたか不明、しかし、こんにちも存在し、機械生産されているデザインです。
柳宗理は常にアノニマスデザインを意識していた。それは民藝による影響からである。
大衆が日常的に利用されている道具などは誰がデザインし、いつ頃から使われていたか不明である。
長い時間を経て、現在も使われている物からアノニマスデザインが見出されるからである。
アノニマスデザインがなぜ魅力的で、機能的で、その土地や人々に愛され、長い時間、使い続けているのか?それを理解することが、デザインをする一つの要素であると考えていた。
アノニマスデザインに学び手仕事の良さを機械生産で表現し、時代が過ぎても変わらないデザインを作りあげようとすることが、本当のデザインであり、それを追い求め、作り続けることが必要である。
名前ばかり、ブランド名ばかりが独り歩きする物は時間の経過とともになくなる流行り物で「デザイン」ではない。
アノニマスデザイン例え
少しだけアノニマスデザインを紹介します。
- ジーンズ、ジーパン、
- 野球のボール、
- 試験管、
- 自転車のサドル
- やかん
- 板前さんの包丁
など、すでに日常生活に溶け込んでいて、意識した事にのない物が意外と多く、これらは、機能的であり、大変美しい形です。
時代を先取りした白磁のカップ&ソーサー
戦後の材料不足の中で、柳宗理は装飾を省いた白磁のカップ&ソーサーを機械生産で作りました。
デパートでの販売断念
彼はこれらの製品を三越デパートに持ち込みましたが、模様がなく未完成品であると判断され、「販売できない」と断られました。
柳宗理の考えは、機械生産された白いカップやソーサーには模様が不要であり、模様は手工業ならではの特徴である。
無地の白磁は機械生産そのものの美しさを表現したものです。
現在では受け入れられる内容だが、戦後間もない時代はデコレーションデザインが人々に好まれていました。
銀座の喫茶店
デパートで販売を断られたた白磁のカップ&ソーサーであったが、銀座喫茶店「トアエモア」で使う。
銀座のトアエモア喫茶店の店主はフランス帰りで柳宗理の白磁のカップ&ソーサーに大いに感銘を受け、自店で使用することにしました。
喫茶店の客が購入
「トアエモア」でコーヒーを楽しむ客たちは、柳宗理が作った白磁のコーヒーカップ&ソーサーに魅了され、話題になる。
数年が経過してデパート松屋が販売にのりだした。
時が経ち、今では白い食器や装飾を省いた家具、そして「無印良品」が日常生活に完全に溶け込んでいます。デザインにおいては、もはやデコレーションだけではなく、シンプルさも重要な要素となりました。
蘇ったカップ&ソーサー
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/Screenshot-2023-06-25-12.00.56.png)
2023年現在、手軽に柳宗理デザインに触れられる、まあたらしい場所として、「上島珈琲店」を紹介したい。
上島珈琲店では柳宗理の椅子とカップ&ソーサーが楽しめる。
椅子は天童木工T-3035AS-(価格75,900円)材質:ホワイトアッシュ、スタッキング可能、重量4kg、が配置されている。
カップは骨灰(こつばい)を主成分とするボーンチャイナ、1952年にデザインされた「松村硬質陶器N型シリーズ」をリデザインした。石川県、陶磁器メーカー、ニッコー株式会社で製作されているカップで珈琲が飲める。
参照サイト:NIKKO
まとめ
![](https://yo-2.life/wp-content/uploads/2023/06/バケットテーブルと鍋.jpg)
身の回りのモノやデザインについて考えるきっかけとなったのは、毎日使うミルクパンでした。そして、柳宗理の誕生日である6月29日を迎えるにあたり、デザインについて考えてみました。
最近では「デザイン」という言葉を目にするだけでなく、耳にする機会も増えました。サッカーの中継を見ていても、討論番組を視聴していても、「デザイン」という言葉が頻繁に使われています。
現在の「デザイン」には、さまざまな解釈が存在するようです。この記事では、デザインの本質は人間であり、人のためにモノを創り出すことをデザインと定義しています。
そして、どんな目的であっても、その目的を達成するためのプロセスもまた「デザイン」に含まれるのです。
そのためには、他者との協力関係が欠かせません。デザインとは、デザイナーと技術者が協力し合って生み出す結果なのです。
今回は、人々のために生まれたデザインの一例として、デザイナー柳宗理と彼の作品であるステンレス片手鍋を紹介しました。
購入することだけでなく、ステンレス片手鍋を手に取る機会があればぜひ体験してみてください。
取っ手の握り心地や重さ、そして機能美を実感してください。何か特別な感触を感じることでしょう。
現代では、物が過剰に存在していると言われています。実際、不要なモノが7割もあると言われています。
その中で、柳宗理という一人のデザイナーと一つの鍋を通じて、デザインの力を感じ取り、自分にとって本当に良いモノを見つけ出すことができるかもしれません。